【書籍】『邪悪な世界のもがき方: 格差と搾取の資本主義で生き残るための株式投資』

鈴木 傾城著『邪悪な世界のもがき方: 格差と搾取の資本主義で生き残るための株式投資』という本を読んだ。
結構面白かったので、少し紹介したい。

分量も少なめで、専門知識も要らず、分かりやすい文章で書かれているのでサクッと読める。



内容としては、資本主義社会では株式投資が最強だという主張だ。
それは、フォーブスの世界長者番付を見ればわかる。

このランキングの上位にいるのは、会社の創業者や投資家ばかりで、企業の株を大量に持っているのが特徴だ。
資産のほとんどは持っている株の価値である。

不動産や金、原油に投資している人はこのランキングの少なくとも上位にはいない。
つまり企業の株を持つことが、今の資本主義に最も適した行動なのだ。

資本主義では資本家と労働者に分けられるが、労働者も労働力という資本(人的資本)を使ってお金を稼いでいるから、労働者もある意味資本家である。

しかし、ほとんどの人にとって労働(人的資本)だけで豊かになるにはかなり厳しい。
豊かになるどころか、搾取されてまともな生活を送れない人もいるくらいだ。

労働(人的資本)は多くの人にとって最弱の資本になってしまった。

大きな人的資本を持たない多くの凡人が、おそらく唯一豊かになる方法が投資であり、そして投資の中でも株式投資が最強なのである。

株式投資と言っても、いわゆる「株をやる」と言われるような、頻繁に売買を繰り返すことではない。
「優良な多国籍企業」の株を出来るだけたくさん買って、それを持ち続けることだ。

世界長者番付に入っているような人は、そういう企業の株を大量に持っていて、なおかつ持ち続けた人たちだ。
この中にデイトレーダーはいない。

株を出来るだけたくさん買うには、出来るだけお金を貯めて、出来るだけ株価が安くなったときに買う、ただそれだけだ。


じゃあ「優良な多国籍企業」とは具体的にどれなのか。

今のような技術進歩が早い時代では、企業の栄枯盛衰も早い。
そのような中で、一つの会社の株を買い続けて長期保有するのは不安が付きまとう。

しかし、進歩の遅い変わらないものもある。
それは、我々人間が快楽を求め続ける「動物」であることだ。

そして、世の中には中毒になるくらいの快楽を得られ、かつ合法なものがある。
タバコ、酒、あと中毒の程度は低いが砂糖もそうだ。
こういったものを世界中に売りさばいている企業の株を持つのが、比較的安全で再現性が高い。

本書で代表的な企業として挙げられているのは、フィリップ・モリス(アメリカのタバコ会社)、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギーの酒類メーカー)、コカ・コーラ(アメリカの飲料メーカー)だ。
(フィリップ・モリスは現在、国内事業のアルトリア・グループと海外事業のフィリップ・モリス・インターナショナルに分かれている)

世界中の人はこれらの企業にお金を払っている。
なぜなら、これらの企業が作る商品には中毒性があり、やめられないから。
みんなタバコにハマるし、ビールにハマるし、味の付いた砂糖水(コーラなど)にハマる。

これらの企業は、ずっと昔から同じものをひたすら売り続けている。
商品の中身が何も変わっていないのに、不況が来ようがいつも平然と利益を上げている。
それも並みの企業じゃあり得ないくらい膨大な利益を。

上に挙げた3社は、ただひたすら同じものを売り続けているだけなのに、時価総額は日本首位のトヨタ自動車と同程度だ。(約20兆円)
トヨタは常に時代に乗り遅れないように努力しているというのに…

このことからも、人間の本能に根差した企業がいかに強いかが分かる。
そして、こういう企業の株を持つことが、持たざる者が貧困から脱出する数少ない再現性の高い方法なのだ。

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