正しいリスクの取り方(その2)

正しいリスクの取り方(その1)
前回の続き。

人のリスクの取り方の傾向は、プロスペクト理論の四分割パターンで表される。

四分割パターン
出典:『ファスト&スロー(下)』


これらの内、上段の2つは投資やギャンブルにおいて重要である。


投資で負ける人

これは株式投資で言うと、値上がりした株はすぐに利益確定売りしてしまい(左上)、値下がりした株は含み損の状態で塩漬け(右上)にするパターンだ。

株価が上がっても、含み益の状態ではその利益が消えてしまう可能性があるので、それを恐れて株をすぐ売ってしまう(リスクを回避する)。

また、含み損で売るのは損失を確定させることだから、これを嫌って不調な株でも保有し続けて(リスクを取って)、株価が回復するわずかな可能性に期待してしまう。

しかし、値上がりする株というのは基本的に業績が良く、将来性が期待されているので、しばらく上がり続けることが多い。そのため、売って後悔することが多々ある。

また、値下がりする株というのは基本的に業績が悪く、将来性が期待されていないので、しばらく下がり続けることが多い。そのため、塩漬けしていると、含み損がどんどん膨らんでいく。

上記のことをやっていると、利益は限定されるのに、損失はどこまでも広がっていく。いわゆるコツコツドカンの負け方だ。

この場合、優良株であるなら保有し続ける(リスクを取る)のが合理的だ。頻繁に利益確定売りをするのは、取引コストがかさむ上、売却益から税金も取られる。リスクを抑えるために余計なコストを払っていることになる。

また、将来性のない株はさっさと損切りする(リスクを回避する)のが合理的だ。もちろん一時的な下落だと思うなら買い増し(ナンピン)するのもいいが、含み損がさらに拡大して取り返しのつかないことになる可能性がある。

ギャンブル(麻雀)で負ける人

あと、私が好きなギャンブルである麻雀で例えるなら、トップの時は点差を守るために、いい手を張ってもリーチしなかったり、すぐにオリたりし(リスクを回避する)、ラスのときは一発逆転を狙って、オリずに無茶な手を作ろうと(リスクを取る)しがちなことだろう。

この場合、勝ちが多くても大勝することなく、逆に負けるときは大敗することが多いので、トータルではマイナスになりやすい。でも、ほとんどの人はこういう打ちまわしをしていると思う。本当は逆で、勝てそうなときは攻めて、負けそうなときは守ってたほうがいいのに。

おわりに

基本的に、人はプロスペクト理論通りの行動をするのが心地いい。なぜなら本能に従っているから。本能に従う場合、あまり考えなくていいから楽なのだ。だがこの場合、期待値を無視して損失を回避しようとすることが多々ある。

合理的な行動を取るなら本能に逆らう必要があるが、これは不快な思いをすることになるから結構難しい。

もちろん、絶対にプロスペクト理論の逆をすればいいというわけではなく、期待値がどれくらいかを正しく認識しろということだ。そして、常に損失回避性というバイアスがかかっていることを意識しないといけない。

日ごろからこのことを意識しておけば、いざという時に正しくリスクを取れるようになるかもしれない。


参考図書:

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